「赤は嘘の色なんだよ」
タシロさんは言った。
「だから赤い血が躰の中を流れている人間はみんな嘘つきなんだ」


タシロさんは自称非人間。つまり自分は人間じゃないと自分で言ってるってことだ。
年齢(タシロさんはもう成人している)にそぐわぬ矮躯と童顔は確かに人ならざるオーラを放っている気もする。
じゃあ、いったい何の生物なのかと問うてみたこともあったが、ただ簡潔に「生物じゃない」と帰ってきた。ちなみに、有機物でもないらしい。


「わたしは人間じゃないから嘘つきじゃないんだよ」 「そうですか」

タシロさんの血も多分赤い、と言うことを告げようかどうか一瞬迷ったけどやめた。
とりあえず彼女に軽いけがでもさせてみたらいいのかな、と考えながら俺は煙草を燻らせる。
煙ごしに見た彼女の笑顔は無垢で、それでいて確かに嘘吐きの其れだった。